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わたしにとっての私。


怒涛のような日々だった。

体調を崩し、夜間救急に運ばれたのが

6月の半ばだったか。

そこで、自分の体に巣食っていた腫瘍が見つかり

いくつかの検査をして

先週、入院をして手術を受けた。

無事に手術は終わり、数日前に自宅へと戻ってきた。

昔から、身体は弱いけれど

入院や手術を受けることはほとんどなくて

だから、今回の手術は

自分自身の中でも、大きな変化だった。

元々、脂肪腫ができやすい体質で

頭と耳から、腫瘍をとる手術をそれぞれ受けたことがあった。

それらは、局部麻酔で日帰りで帰れるような

簡易手術だった。

傷跡はもうほとんど分からない。

手術を受けた本人でさえ、確信がないほどに目立たない。

だから、あまり手術を受けたとかそういう感覚ですらなくなっていた。

でも、今回は違う。

全身麻酔を受け、腹部に数か所、メスを入れた。

他の術式よりは小さいとはいえ、手術痕はくっきりと残っている。

自分が、何か戻れないものになってしまった気がした。

生まれたそのままがいいから、と

髪を染めたこともなく、ピアスも開けたことがない。

一度してしまえば、「やっていない」自分には戻れないから

どれだけ黒染めしようが、ピアスの穴がふさがろうが

なかったことには戻らないから、と

異常なまでに嫌っていた。

そんな自分の拘りは、面倒だけれど

自分の信念みたいな気がして、嫌いじゃなかった。

でも、今回の手術で

自分の体に傷が残った。

別に体に自身があったわけでない。

特段気に入っている部分を失ったわけではない。

それでも、

身体の部位が変形し、もう二度と

戻らないのだとわかったときに

説明しようがないほどにショックだった。

術後、数日が経って

傷跡を見るたびに、前の自分を思い出す。

もう

身体を見せるような写真は撮れないのだろうかと不安になる。

サイトを振り返っていたら

ちょうど、手術で切った部分が映っている写真があった。

まだ、傷のない腹部。

私は何を失ったんだろう。

何も失ってないはずなのに。

この傷が薄くなったとしても、

きっともう、

前の私ではなくなってしまっている。

それがずっと続いている

喪失感の理由。

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