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忘れたくないことだらけ。


あの人懐こかった黒猫の名前を

私はもう、思い出せない。

記憶は曖昧で

都合のいいように書き換えられたものは

いつまでも綺麗なままだ。

世界からつまみ出されてしまった私は

いつの間にかどこかに置き去りになって

歯車のひとつになった私は

今もうまく回っているふりを続けている。

誰も知らない秘密も

私の中で書き換わってしまうんだろうか。

あの黒猫の名前だけは

いつまでも空白のままにしたい、なんて思う。

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